都市は様々な物事が集まってできている。
天候、季節、時間、そして人との関わりあい方次第で刻一刻と変化していく、まるで生き物のようだ。その生き物には名前があるものの、個体として全体を把握することはなかなか難しい。
しかし、そこに住む私たちが都市を共有していると感じるために都市計画では「ある」とされていないものの、実際には当然「ある」し、今後もありつづけるものたちに目を向けてみよう。それらはシナプスのように何かと繋がりを持っているはずだし、もしくは繋がるはずだ。それに、気づき幸せな気持ちになれるものを、楽しくなるものを、笑顔になるものをひとつ都市に参加させてみたい。
そこで、名古屋内外の人達が集まるこのプロジェクトでは、参加者それぞれの持つ視点を引き出し、それらの違いを認識し合いチームとしての複眼的な認識力を高めることを目標とする。
+WATER
このプロジェクトは、プロセスもまた作品の一部である。各メンバーの個性に注目し、各自が最近気になっているものを挙げ、そのエッセンスをいかに抽出し、アウトプットするかということに尽力した。そのプロセスを通じて、「accessing water (=information)」、「unexpected coincidence」、「keeping/sharing memories」の3つのキーワードを得たが、これらはすべて、各メンバーがはじめに曖昧な形で持っていたキーワードから生まれたものである。そして、「目に見えないもの、しかしあるものを見る」というテーマのもとにプロジェクトを発展させた。
情報には、目に見えるガイドのようなパブリックな情報と、ガイドには載らないプライベートな情報がある。今回は誰かの体験というプライベートな情報に注目し、その情報を偶発的に提供することで、新しい体験ができるのではないかと考えた。
水のあるところには、人が集まる。
「+WATER」のラベルをめくると、誰かの体験に基づいた、名古屋に関する情報(accessing water (=information))が記載されている。また、ボトルは持ち歩きやすいように、一般のものよりも小さなサイズである。そのため、記載されている場所へ行って、新しい体験をする頃には、ボトルの水はなくなっているだろう。その体験の思い出・おみやげ(keeping/sharing memories)としてキャップの部分は持ち帰り、ボトル部分はリサイクルをする。そして再び、新しい「+WATER」を購入し、偶然の体験・出会い(unexpected coincidence)を続けるのである。
日常の生活の中で起きている、目には見えない様々な感覚を、訪れた場所で体験することによって見つけ出すきっかけを「+WATER」は提供し、他の人と共有することを可能とするのである。
参 : 下山 幸三
デザイナー
参
松尾伴大(音響エンジニア)、甲斐健太郎(ソフトウェアエンジニア)、下山幸三(インテリアデザイナー)によるデザインプロジェクト。参人よれば文殊の知恵。それぞれの専門性を活かしてデザイン活動の場を広げていく。ユーモアのあるストーリーで人・モノ・空間を心地よく結ぶデザインを行う。2009年ミラノサローネにて各国のELLE DECO誌が選ぶ若手24組に選出。
下山 幸三
1977年岡山県生まれ/2000年筑波大学基礎工学類卒業/2003年同芸術専門学群建築デザイン専攻卒業/現在、京都造形芸術大学非常勤講師
マリア・コンスタンサ・ヌネス (GRUBA)
建築家/プロダクトデザイナー
1975年生まれ。建築家。2001年、ブエノスアイレス大学の建築・デザイン・都市計画学部(FADU)にて学位を取得。同学部の教授陣の一員として、4年間、建築を教える。1997年、「FADUワークショップ1997」で一等賞を受賞。2005年、アカデミー・オブ・アムステルダムとブエノスアイレス大学とアヴェラネダ市役所後援プログラムの一環として、「不法滞在する人々の定住地」に関する大学院研究を行うためにオランダに旅をする。2006年、トルクァト・ディ・テラ大学にて、大学院プログラム「建築とテクノロジー」に加わる。1999年から、フリーランスのプロとして活動開始。2006年、分野横断的グループ「GRUBA」を創設し、現在、ブエノスアイレス・デザインセンター(CMD)の「IncuBAプログラム」に参加している。
2007年、ブエノスアイレス市の環境保護エージェンシーや、ブエノスアイレス州のサステナブル・ディベロップメント・プロヴィンシャル・オーソリティといった持続可能な開発に果敢に取り組む会社や機関に向けて、サステナブルな建築サービスの提供を開始。「GRUBA」のいくつかのプロジェクトは、国内外の展示会に展示されたり、専門誌に特集され、広く賞賛を勝ち得ている。
2008年、カサ・フォア(インテリアデザイン展)において「合理的エネルギー活用賞」を受賞。2010年にはCMDからの推薦により、DMY(ベルリン国際デザインフェスティバル)に出品。GRUBA制作の腰掛け「S.O.S デ・バリオ」が、インフルエンシャス・コンペティションで、一等賞を獲得。
またGRUBAの“カルトネラ”シリーズは、2010年のサステナブルデザインプロジェクトの25のトップ作品の一つに選ばれ、「アルゼンチン発サステナブルデザイン」誌に掲載された。
和田 義行
名古屋芸術大学 デザイン学部 教授
名古屋市生まれ。名古屋芸術大学工芸工業デザイン専攻卒。
同芸大助手からイギリス・ロイヤルカレッジオブアートID学部に学び、帰国後准教授を経て、現在名古屋芸術大学デザイン学部教授、同大学院デザイン研究科教授。ドイツ、シンガポール、韓国、中国など海外でのデザイン講演会・デザインワークショップを開催。
張 毓琦
台湾成功大学
高 婷婷
台南科技大学
木村 容子
名古屋芸術大学
李 寧
名古屋造形大学大学院
高橋 一誠
名古屋市立大学大学院
吉田 真也
フリーランスデザイナー