ジョン・ウッド
ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ デザイン学部教授
今日、我々が直面する環境危機は、一説には、安価なエネルギーが潤沢であるために、我々の生活に多様性というものが減少していることに起因すると言われている。例えばフォード型生産様式(大量生産システム)は、社会的、環境的な安寧をもたらしたというより、経済活動の取引サイクル(収益・買付け・生産)のどの時点においても、幅の狭い「効率化」を実現しただけである。我々が住み慣れている都市は、あらゆるレベルで効率性に富むというより、素早くあちこちと移動できるようにデザインされている。この意味は、我々は、地域に根差した多様性というものに対して必要性を感じないということである。既にほぼ、安価なエネルギーの時代は終焉しているにもかかわらず、我々は、生活範囲をどんどん広げ続けている。
都市をデザインするにあたっては、出来る限り多くのレベルで相乗効果を培い高めていくことが、より望ましい方法であろう。相乗効果というものは、極めて過小に評価されている。他のどのようなサステナブルなアプローチとも異なり、過去に実現された相乗効果は、資源に元々備わるメリットよりずっと多くのメリットを提供しているのである。
相乗効果を図るアプローチは、従来のアプローチより複雑である。このため、新たな方法論が必要となる。我々は、相乗効果を培う目的で90を超えるツールを開発し、これを、「メタデザイン」と名付けている。デザインが、欲望や意図を管理・指揮する予測手法であると考えるならば、「メタデザイン」は、チャンスを作ったり、管理・指揮したりする方法として萌芽する可能性を孕んだデザインプロセスと言える。究極的には、相乗効果を見出すことが一つの起業プロセスとなるのである。しかしながら、これは、多様性が無いところでは機能しない。その故に、我々は「複合的相乗効果から生み出される究極の相乗効果」を実現するには、「複合的多様性によって生みだされる多様性」を必要とする。「究極の相乗効果(シナジー・オブ・シナジーズ)」は、経済、環境、文化、言語、テクノロジー等といった身近なレベルの現実を一元管理し、超越し、あらゆる境界線を透過していくのである。