Barrack(近藤佳那子・古畑大気) + 阿野太一

プログラム

Barrack(近藤佳那子・古畑大気) + 阿野太一

展示〈熱田・宮の渡しエリア〉

Art Space & Cafe Bar Barrack

制作年:2021
素材・技法:瀬戸市にある「Barrack」の可動壁+阿野太一の写真
設営協力:谷 薫 工房名月

会場:
丹羽家住宅(旧伊勢久)

カフェバー営業日時:
3月12日(金)-28日(日)の金土日 12:00-20:00 (L.O.19:30)

アクセス

瀬戸市に拠点を持つBarrack(近藤佳那子・古畑大気)と写真家・阿野太一のコラボレーション。明治期に世界へ向けた瀬戸の陶磁器輸送に大きく貢献した瀬戸電気鉄道と、水運のターミナル駅があった堀川の関係にスポットを当てる。陶磁器が運ばれた堀川河口に位置する、かつて東海道の宮宿で旅籠屋として使われていた建物の中にBarrackのギャラリースペースを1/1スケールで持ち込み、瀬戸在住の写真家・阿野太一をゲストアーティストに迎え、瀬戸と堀川、宮宿の歴史の一端を読み解く作品+カフェバーを展開。

アーティスト・ステートメント

明治期に世界へ向けた瀬戸の陶磁器輸送に大きく貢献した瀬戸電気鉄道と、水運のためターミナル駅があった堀川の関係にスポットを当てる。陶磁器が運ばれた堀川河口に位置する、かつて東海道の宮宿で旅籠屋として使われていた建物を使い、瀬戸と堀川、宮宿の歴史の一端を読み解く作品+カフェバーを展開する。

作品紹介

せとものと堀川
瀬戸と堀川の関係を探るには、”せともの”と瀬戸電の愛称で親しまれた瀬戸電気鉄道(現在の名古屋鉄道瀬戸線)が大きく関わっている。現在はその痕跡が僅かに残るのみだが、かつて名古屋城の外堀南西隅部、景雲橋小園(けいうんばしこぞの)の北側に瀬戸と堀川を結ぶ起点となった「堀川駅」があった。
瀬戸線は、もともと瀬戸の陶磁器やそれらに必要な資材などの貨物輸送を大きな目的として明治中期に建設されたため、堀川の船による水運を活用し、瀬戸から国内各地、世界へ向けた輸出や名古屋市街への荷揚げが可能となる堀川に接するこの位置がターミナル駅とされた。

  • 1905(明治38年)4月2日 瀬戸自動鉄道により瀬戸~矢田間が開通。
  • 1906(明治39年)3月1日  矢田~大曽根間が開通。
  • 1906(明治39年)12月18日 社名を「瀬戸電気鉄道株式会社」に変更。
  • 1907(明治40年)3月17日 電車の運行を開始。
  • 1911(明治44年)5月23日 大曽根~土居下間が開通。
  • 1911(明治44年)10月1日 土居下~堀川間開通。
  • 1939(昭和14年)9月1日 瀬戸電気鉄道と名古屋鉄道が合併。「名鉄瀬戸線」となる。

宮の渡しと丹羽家住宅(旧伊勢久)
東海道の宮の渡しの船着場に面して建っているこの元旅籠屋は幾度もの増築改装を繰り返し現在の姿になった。外見はさほど変わっていないようだが、中身は大きく変わっている。1808年(文化5年)伊勢久という屋号で旅籠屋だった面影があるのは所々に露出する躯体の一部と道路に面した二階くらいだろう。大きく開いた窓の外に広がる宮宿の景色がこの旅籠屋の売りであったことは容易に想像がつく。丹羽家とは昭和59年に名古屋市指定有形文化財になる以前に所有していた持ち主に由来する。また、内装は調査のために壁や床が所々穴が開けられている。

今回、堀川を通りせとものが運ばれてきたこの土地にBarrackのギャラリースペースの展示壁を約1/1スケールで再現し、ストリーミング・ヘリテージの舞台で時代の移り変わりとともに表層が入れ変わってきた丹羽家住宅に新しく入れ子状の空間を設定した。
ギャラリーでは、宮の渡し・名古屋港からウィーン、フィラデルフィア、パリなどの万国博覧会へ出品し高い評価を得た明治期の瀬戸染付にスポットを充て写真家阿野太一が作品を展開する。立体物をスキャニングしたような手法で撮られた瀬戸染付は表面の透明な釉薬が剥ぎ取られ、モノから絵、磁器から写真などイメージの混乱を誘発する。美術と工芸、絵画とデザイン、オリジナルの定義など、曖昧な境界を行き来し問いかけるような作品と、その隙間から覗く、過去からの変化と不変を内包した宮の渡しの景色を同一線上に置くことで歴史の一端にある現在の再確認を試みている。

1階のカフェスペースに展示されている阿野太一の「瀬戸 2019」で表される瀬戸の遍歴が垣間見える一連の写真作品も同様である。

アーティスト

Barrack(近藤佳那子・古畑大気)

フード+アート

近藤佳那子と古畑大気の運営するギャラリー&カフェスペース及びユニット。
愛知県瀬戸市にて元電器屋を改装し、美術と人、まちが繋がる実験の場として週4日間の店舗営業と月ごとの展覧会を行いながら、そこを拠点に様々なアートイベントやプロジェクトに参加している。
※barrackとはもともと「にわか造りの建物」の意味。

阿野太一

写真

写真家。主に建築写真を撮影。「瀬戸現代美術展2019」では自身が撮りためた瀬戸の風景に内包された歴史や遍歴を読み解く「瀬戸2015」を発表。