井藤雄一

プログラム

井藤雄一《Recollecting Shortages》2021

展示〈納屋橋エリア〉

Recollecting Shortages

会場:
天王崎橋

制作年:2021
素材・技法:グリッチ(画像や音響データを意図的に部分破壊しその結果を表出させる手法)

  • 夕方からの上映となります。

アクセス

天王崎橋の周辺で撮影・収録した映像や音をもとに、グリッチやノイズと呼ばれるデータのエラーを表出させる手法を用いて制作した映像を橋の下に投影。デジタルメディアの誤⽤による違和感をデフォルメすることで、普段見える景色とは少し違った新たな堀川の景色を立ち上げる。

アーティスト・ステートメント

「Recollecting Shortages」(不⾜を想う)
思い出されるのは、昨年のちょうど今頃、どこに⾏ってもマスクが売っていなかったことだ。⽇本のみならず世界中で⾜りていないという珍しい事態を経験をしたように思う。そういえば、トイレットペーパーも⾜りなかった。考えてみれば⾃分⾃⾝についても⾜りないことが多い。しかし、そんなことは事⾜りたときには忘れてしまうのだろう。今回の会場となっている堀川は名古屋の街並みや⼈々の暮らしを⾒てきたのだろうか。

映像を良く⾒せるために、1秒間に表⽰されるコマ数を多くする⼿法がある。例えば1秒間30コマの映像と60コマの映像を⾒⽐べると、コマ数が多いほうが映像が良く感じる。現代の映像処理技術では、機械的に30コマを60コマへ増やすことができる。フレーム補間と呼ばれる技術で古い映像に対して施されることが多い。逆に、少なくすることで、ノスタルジックな映像になることもある。しかし、この技術で1秒1コマの映像を1秒30コマへ増やすと、さすがに不⾃然な映像ができる。しかも、もともと記録されている映像と異なった映像が⽣成される。この⽣成された世界はどこにあるのか。記録が不⾜した歴史を辿っていくような気分になる。

本作は情報メディアの誤⽤(本来とは異なる使⽤法にてデジタルメディアを扱うこと)による映像表現を利⽤した作品である。フレーム補間を誤⽤した映像にノイズ表現を加えて天王崎橋の橋脚へ投影する。映像は平⾯に⾒ることができない。また、天王崎橋と堀川をテーマにした⾳響も設置する。普段にはない⾳が⽿を澄ますと橋の下から聞こえてくる。それらが組み合わさることで、堀川の流れやその橋の様⼦の変化を⾒つけ、少し⽴ち⽌まる。これまでの時代とこれからの時代について考えられる空間と時間を提供したい。

アーティスト

井藤雄一

メディア・アート + パフォーマンス

愛知県豊田市出身。2014年に中京大学大学院情報科学研究科メディア科学専攻博士後期課程修了(博士 メディア科学)。その後、中京大学工学部メディア工学科にて助手1年と助教4年を勤め、2019年より神奈川工科大学情報学部情報メディア学科講師。
これまでにPrix Ars Electronica 07 Interactive Art部門、MEC Award 2015等で作品が入賞している。現在は映像や音などのデジタルメディアを意図的に誤用(本来とは異なる使用法にてデジタルメディアを扱うこと)してノイズやグリッチと呼ばれるデータのエラーを表出させる手法のメディア表現に注目している。誰しもが普段から身の回りで利用しているデジタルメディアの異なる姿を意図的に表出させることは、あったかもしれない別の世界のシミュレーションだと捉えられるのではないかと考えている。デジタルメディアの誤用による違和感をデフォルメして、そのシミュレーションから物事を複眼的に見ることができる作品を目指して日々制作と研究に邁進している。

関連プログラム

  • パフォーマンス〈納屋橋エリア〉

    井藤雄一 パフォーマンス

    パフォーマンスの時間帯のみ映像を見ながらサウンドをライブ演奏します。

    日時:
    3月27日(土) 18:30〜1時間程度※雨天中止
    会場:
    天王崎橋