2013年9月9日
ジャン・ボドワン デザイントーク「進化する景観ー時間と空間のデザイン」を開催しました。
ジャン・ボドワンさんは、名古屋市と同じくクリエイティブ・デザインシティであるモントリオール市在住の建築家で、2011年度の事業「ぺちゃくちゃないと2012 クリエイティブ・デザインシティなごや」への参加をきっかけに、名古屋市の中川運河のキャナルアートや長者町でのアートプロジェクトに興味を持ち、今回のデザイントークの開催へとつながりました。
トークでは、低予算での街の活性化プロジェクトなど、市民を巻き込みながら成功を収めてきた、ご自身のモントリオール市で行った事例が多く紹介されました。また、創造都市名古屋のこれからの可能性についても言及し、会場からも多くの質問の声が上がりました。
ジャン・ボドワン デザイントーク サマリー
名古屋という街は、モントリオールと同じく、地下の街・地上の街が存在する都市である。この点において、名古屋は特別なインスピレーションを与えてくれる。例えば、オアシス21では、空に開いた空間と地下がパブリックスペースによって繋がっており、非常に興味深いデザインとなっている。また、長者町や中川運河で実施されているような、パブリックスペースを活用した、市民と共同体の主導による街の再活性化プロジェクトは、アートを利用した都市づくりの可能性を感じさせてくれる。
これまでに関わってきた建築プロジェクトでは、建物の中に活動を取り込み、建物を生き生きとさせ、そして、古い文化から学んだことを、デザインの中で新しいものへと昇華していくことで、そのアイデンティティを表現してきた。こうしたプロジェクトは短期間で集中的に、大きな予算で実施されたものであるが、一方で、長期に渡って低予算で実施したのが、モントリオールのダウンタウンを変容させていくというプロジェクトである。開始時の予算は5,000ドル程度と少なく、また、メンバー数も名古屋の中川運河キャナルアートのプロジェクトと変わらない規模であったが、そのようなプロジェクトに効果的なツールとして、大きな費用がかからない照明を利用し、ショーを開催中の劇場を目立たせるというアプローチを取った。モントリオール市には40の劇場があるが、全ての劇場で「3つの瞬間(クローズ中、開催中、時報)」を、照明を用いて表現するというガイドラインを定めることによって、各劇場の個性を出しながらも、このプロジェクトを街全体で共有することができた。最終的にはこの活動の意義がモントリオール市政府にも認められ、予算も50万ドルまで増え、シネマや図書館、教会など、劇場以外の施設にも参加してもらうことができた。
一般的に都市というのは、モントリオールもそうであるが、ゆっくりと進化していくものである。新たに立派なものを建築するだけではなく、クリエイションを通じて、特に市民の協力的な作業によって、既存の資産を活かすことも十分可能である。そうした進化は、新たなツーリズムや雇用の可能性を生み出し、国や地方自治体の注目を集め、予算が得られ、ランドスケープの変化、新たな建築物の建造といった次のステップに結びついていく。
今回、名古屋のまちづくりの取り組みを見学したが、中川運河のキャナルアートや長者町地区には、文化的な市民、そして良いコンテンツが揃っていると感じた。また、名古屋では、街を変容させていこうという試みが、市ではなく市民から生まれている。それゆえに、物流倉庫などの市の所有物でない魅力的な資産を自由に変化させることができ、またそれによって、市に興味を持ってもらうことも可能だと感じた。
大きな夢を描いて、プロジェクトを立てていくことも大事だが、今できること、小さなアート、情報のランドスケープを作ること、人々の活動を盛りたてていくこと、イベントを行うこと、そうした小さなことから、大きな変化へつなげていくこともできる。今この瞬間も、街は動いている。
日時 | 2013年6月4日(火) |
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会場 | 国際デザインセンター6F セミナールーム3 |
主催 | 国際デザインセンター、クリエイティブ・デザインシティなごや推進事業実行委員会 |
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